2021年12月10日金曜日

トマトすき焼き 悶絶


フロンティア精神が薄れてきたせいで、通い慣れた店ばかりに出かけている。それはそれで落ち着くが、やはりいくつになっても新たな刺激は必要だ。

 

大袈裟に言えば自分の五感を研ぎ澄ますためには決まったルーティンに依存しているだけではダメだろう。

 

などと大上段に書き始めてしまったが、先日、初めて入った店で新鮮な喜びを味わった。料理のジャンルはすき焼きなのだが「トマトすき焼き」という少しひねった料理がウリのお店だ。

 

職場から歩いて行ける距離なので前々から気になっていた京橋にある「婆娑羅」。ひょんなことから初訪問した。

 

その昔、六本木にあった「婆娑羅」には何度か行った記憶がある。当時からトマトすき焼きはあったのだろうか。私がトマトを食べるようになったのはここ10年ぐらいだから少なくとも食べたことはない。

 

モダンで高級感のある雰囲気、銀座のお隣・京橋というちょっと隠れ家的な立地、店員さんのサービスもキチンとしていて良かった。

 


 

細長い三段の小箱に収められた前菜は美しさだけでなく味付けも繊細で丁寧。プロの仕事を感じた。こういう細やかな技量を見るとトマトすき焼き以外の料理もかなり高水準だと想像できる。

 


 

トマトすき焼きはすべてお店の人が作ってくれるからこちらはムホムホ喜んで食べるだけだ。野菜がトマトとタマネギだけという潔さが私にとっては喜びである。

 

トマトとタマネギに火が入ったらお肉を投入、仕上がったら3点セットにして取り分けてくれる。なかなか絵になる取り合わせだ。

 

生卵ではなく軽く温玉状態になったタマゴが用意されているのがニクい。このひと手間が全体の味に大きく影響している。

 



 

温玉状態を崩したタマゴのほうが肉や野菜とよく絡む。この加減が新鮮だった。すき焼きには生卵という固定観念のせいで気付かなかったが、このやり方は家庭でも簡単に応用できる。

 

いつだったか、どこかの美味しい串焼き屋でトマト串を食べて以来、火を入れたトマトに抵抗がなくなった。それまでは苦手な食べ物の筆頭格だったが、いまでは中華料理屋でトマトとタマゴの炒め物を好んで注文するぐらいだ。

 

肉とトマトを口の中で融合させながら食べるのがオススメだ。濃厚に絡むタマゴの黄身も相まって通常のすき焼きを食べているとは微妙に違う新鮮な味わいを感じた。

 

牛肉の重さが年々キツくなっている中高年おじさんだってペロペロといけてしまう。

 

特筆すべきはシメのパスタだ。すき焼きは一応日本の鍋である。そのシメにうどんでも雑炊でもなく平打ち麺のパスタである。これは斬新だった。

 



 トマトとタマネギ、そして牛肉から出たエキスたっぷりの鍋(鉄板?)の上でお店の人が絶妙に味を整えてくれる。

 

しっかり牛肉を食べて正直お腹が苦しくなっていたのに、一口食べたらあらビックリ、トマトソースとミートソースの良い部分だけを抽出したような得も言われぬウマさに悶絶した。

 

日頃、いろいろと分かったような顔をして食べ物の話を語っているが、やはりアンテナを磨いてアレコレ試してみることは大事だ。

 

そういう好奇心が結局は自分の五感を錆びつかせずに日常に潤いをもたらす秘訣だと痛感する。

 

今の時代の東京に暮らすことは、見方を変えればウマいものが溢れかえる人類史上まれに見る幸運な世界に暮らしていることを意味する。

 

最近ファストフード摂取率が高くなっている私は、せっかくの幸運をムダにしているともいえる。実にもったいないことだと改めて感じた。

 

 

 

 

 

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