2年以上ご無沙汰していた店に出かける機会が増えた。コロナぶり?である。残念ながら閉店したお店もあるが、頑張って生き残っているお店に行くと感慨深い。
前回来たときはコロナのコの字もなかった時だから脳天気だった日々が懐かしく感じる。その頃の気分を思い出して脳天気に過ごすのが楽しい。
銀座にある高級焼鳥の店「串銀座」を久しぶりに訪ねた。掘りごたつの小ぶりの個室が私の快適な場所だ。喫煙者にとって憩いの場である。
大衆酒場ならタバコが吸える店は簡単に見つかるが、ちょっと高級な店だと個室だろうと禁煙が当たり前になってきた。その点ここは私にとっての秘密基地みたいなものだ。
個室を利用するにはさすがに一人だと行けないのが面倒だが、連れがいる場合には迷わずカウンターではなく個室を押さえることにしている。
このお店は焼鳥はフツーに美味しいのだが、私のお目当ては焼鳥ではない。抜群にウマい「温玉」である。なんちゃらかんちゃらの理由でコレステロールなども普通の卵より遙かに少ない健康な極上卵を使っている。
健康面はともかく味が濃くて実に芳醇な味わいを楽しめるのが最高だ。その昔、この温玉を何度もお代わりしてで酒のアテにしたこともある。
3年ぶりの極上温玉にコロナ禍を生き延びた幸せを感じる。黄身の味が濃厚だから少しづつチビチビと食べる。みみっちく味わう感じが私の喜びだ。
鳥の各部位の刺身を楽しめるのもこの店に惹かれる点だ。モモや胸、ササミといった定番だけでなく、ハツ、砂肝、レバの刺身があるのが嬉しい。
鳥のレバ刺しは軽やかな風味なのにネットリしていて酒の肴に最適だと思う。わさび醤油でトロリテロリとした食感を口の中で感じながら噛みついた後にジュワンと旨味が滲み出る瞬間が堪らない。
焼鳥はキチンと美味しいという表現が適当だろうか。ハズレはない。1本5~600円以上する。ほんのちょっと歩いて新橋に行けば遙かに安くて充分ウマい焼鳥を楽しめるが、銀座値段だから仕方ない。
ここは日本酒の品揃えがウリの店でもある。1杯で万を超える破格のメニューや1杯数千円というラインナップもある。もちろん普通の値段の酒が中心ではある。私は焼鳥にはついつい焼酎を合わせたくなるので滅多に日本酒は頼まない。お店にとっては邪道なのかもしれない。
シメにご飯モノが欲しくなれば例の卵を使った親子丼やTKGのほか、温玉を乗せたそぼろ丼もある。これがまたホッコリする味で、食べ過ぎデブ野郎への道を着実に進んでしまうことになる。
高級志向の焼鳥屋の良さは意外性にもある。誰かを連れて行くにも「たかが焼鳥」と思わせておいて実は高級路線というヒネりが良い。
ウマい一品料理も揃っているから焼鳥屋というより鶏料理屋と呼んだほうが正解だろう。赤ちょうちんの気軽な焼鳥屋と高級指向の店を使い分けてこそオトナの嗜みかも知れない。
さてさて、毎日毎日高い店ばかりに行くような財力があったとしても大衆酒場の良さは捨てがたい。もし私が月収10億円の傑物になったとしてもホッピーが似合うカジュアルな酒場に行くことは絶対にやめないと思う。
高級店ではそれなりにシュっとした顔で座っている私だが、大衆酒場でデロデロにふぬけた感じで過ごすのも大好きだ。年々疲れやすくなっているからあの気軽な感じはまさにオアシスだと感じる。
ウマいのマズいのといったグルメ評論とは次元の違う世界が成立しているのがまた嬉しい。いわば「赤いウインナーの幸福」である。
赤いウインナーほど昭和の男の子にとって郷愁を誘うものはない。あのどうでもいい味、あの得体の知れない味、そのすべてが愛おしい。
油で炒めてその油がソースと混ざり合って赤いウインナーを包み込んだりするとミシュランもビックリの美味しさになる。ならないか。。
店先に置いてある大衆酒場のメニューに赤いウインナーを見つければ迷わず入ってしまう。そんなに好きならウチに常備すればいいのにそうしないあたりがキモである。あれはやはり大衆酒場で食べるからこそ意味がある。
ケチャップをべっとりつけて食べるのもいいが、やはりソースが一番良い。ケチャップとソースのミックスもアリだ。禁断のマヨネーズだって大いにアリだ。
ホッピーやバイスサワーを片手に赤いウインナーを頬張る時間はまさに至高の瞬間だ。妙に大らかな気持ちになれる。どんなことだって出来そうな気がしてくる。
ついでに言えばグルメグルメとうだうだ語る風潮のつまらなさ、退屈さを痛感する。このブログでさも食通かのようにアレコレ書いていることが小っ恥ずかしくなる。
実に大袈裟だがまさにそんな感じ。油にまみれた赤いウインナーはそんなことを思い起こさせる魔法の食べ物だと思う。
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