先日はカルピスをめぐって驚いたことがあった。水で薄めて飲むのがカルピスの基本だということを若い世代は知らないらしい。思えばカルピスウォーターなる“完成品”が世に出たのは随分前の話だ。
カルピスウォーターを初めて飲んだ時に「妙に薄いな」と感じたと同時にこれが正しい水とカルピスのバランスだったのかと感心したことを覚えている。育ちが良い?私は贅沢にも家でカルピスを濃い目に作っていたわけだ。
当時、お歳暮などで家に届くカルピスは宝物に見えた。ぶどう味みたいなイレギュラーなやつが混ざっているとかなり興奮した。割る時の水加減に気を配るのもいま思えば楽しい時間だった気がする。
話は変わる。真っ当な専門店のウナギを食べたことがない若者も多いみたいだ。10年ぐらい前から稚魚の不漁を理由に価格が高騰したことで若者が手を出せる食べ物ではなくなったのは確かだ。
昔ならハレの日に家族でウナギを食べるような文化があったが「失われた30年」という貧困志向も相まってそんな贅沢も激減したのだろう。
食べるにしてもせいぜいスーパーで売っているウナギか牛丼屋が期間限定で提供する鰻丼ぐらいになり、専門店で職人が手掛けたウナギを口にしたことがない若者ばかりになったのも頷ける話だ。
先日、高校生の息子と散歩ついでに吉野家に入った。ダウン症の息子は体質的に太りやすいので普段は食べ過ぎないように母親がわりと厳しく管理している。私と会うのは月に1度か2度程度だからその際はドカ食いをさせている。息子にとっては至福の時間だと思う。
この日は牛丼特盛に加え唐揚げ丼に鰻重、親子丼を注文。私が食べたのはトータルで1人前ぐらいだったから息子は3人前ぐらいを余裕で平らげたわけだ。牛丼がウマいのは当然だが、ちょっと驚いたのが鰻重の進化だ。
牛丼屋の鰻重はマズい。私は長年そう思ってきた。マニアックに老舗のウナギ専門店に出かけている私の口がおごっているのも確かだが、数年前に何度か食べた時の記憶が最悪だった。小骨だらけで臭みも感じた。こんなものを食べて育つ子供はウナギが嫌いになるだろうと心配していたほどだ。
ところが久しぶりに食べてみた吉野家の牛丼は見違えるように進化していた。並盛で1200円、二枚盛り2千円である。コスパ的に充分合格と言えそうだ。もちろん、老舗の専門店と比べるほどではないが、子供が食べてもウナギを嫌いにならないぐらいにはちゃんとしていた。
「あれれ?案外ウマいんじゃないか!?」。その日は少ししか食べなかったから確認したくなって後日ウーバーで注文してみた。過去に何度かウーバーで牛丼屋の鰻重を注文してその都度後悔していた。ちょっと勇気を出して再トライしたわけだ。
ふむふむ。やはり以前に比べると格段に進化している。エラそうな書きぶりで申しわけないが結構満足した。食後に変な味が口に残るようなこともなかった。身も厚いしタレもベトベトではなかったしヘタな和食屋で食べるよりマトモかもしれない。二枚盛りだったらかなり贅沢な気分に浸れるはずだ。
ニッポンの企業のたゆまぬ努力の賜物だと感心した。中国のウナギ養殖場も日本企業の指導で昔とは様子が変わっているらしい。逆に言えば数年前のあのマズさは何だったんだろう。よくあんなレベルで商品展開したものだと逆に気になってしまった。吉野家以外にもウナギを出す他の牛丼チェーンも同じように進化しているのだろうか。
ついでにウナギのネタをもう一つ。今まで「まあまあ」だと思っていた鰻屋さんの鰻重が妙に美味しくて嬉しかった話である。お店は神楽坂にある「志満金」。過去に何度も食べに行ったことがある店だ。
雰囲気も渋めでお気に入りの店の一つではあったが、ナゼかこの日は今までよりも遥かに美味しく感じた。今年食べた鰻重の中で一番美味しく感じた。ちょっと首をひねっちゃうほどウマかった。
老舗だからそうそう味が変わるはずはない。私の味覚に異変が起きたのか、それともよほど機嫌が良くて体調も良かったのか、はたまたたまたま一番の腕っこきの職人さんが手掛けた鰻重だったのだろうか。
吉野家の鰻重みたいに確認のために再トライしようかと思っている。最近は職場や家の近くでしか外食しなくなってしまったから今回みたいな刺激は新鮮だ。
ここ5年ぐらいですっかり開拓精神が希薄になり、ジャンルを問わず決まった店にしか足を運ばなくなった。この悪い癖?のせいで老け込んでしまわないためにもマメにいろんな場所に行ってみようと思う。
4 件のコメント:
すき家のウナ牛大好きてすが..
ゆうこ様
すき家の鰻重もトライしたいと思います!
子供の頃に通っていたピアノ教室でカルピスのキリンレモン割りを出された時にはあまりの旨さに驚いたことを思い出しました。
カルピスソーダが発売されるかなり前のことです。
それはウマいかも。今度やってみます
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