昨年の暮れに再検査するハメになった怪しげな胃のポリープは一応悪性では無いということで今後も継続チェックという結果に収まった。
すい臓がんは見つかったら手遅れという通説で知られる。おまけに早期発見がしにくいという厄介なシロモノである。そんな通説を打破しようと奮戦している専門医を紹介されたので恐る恐る検査に出かけた。
とくに症状も無いので気にしていてもキリがないのだが、なかなか予約が取れない専門医にルートが出来たので「せっかくだから」というノリで訪ねた。
まずはMRIである。昨年夏にも受けたのだが、その際はすい臓に「のう胞」すなわち分泌物の袋が出来ているという指摘を受けた。その時のお医者さんの話ではMRIの性能が良くなってのう胞が見つかるケースが増えており、とりあえず様子見で良いという話だった。
ネットで調べても重大な心配事でもなさそうなので気にしていなかったのだが、せっかく先端医療で知られるすい臓専門医に診てもらえるわけだから改めてすい臓中心に撮影をし直してより専門的な診断を仰ぐことにしたわけだ。
閉所恐怖症気味の私にとってCT検査はヘッチャラでもMRIは強敵である。毎度パニックを起こしそうになる。今回は事前に安定剤を多めに飲んでちょっとボーっとした状態で機械の中に収まってみた。
機械の中に入る前から目をつぶっているのが有効だと技師さんからアドバイスを受けたせいもあって今回は修羅場にならずに済んだ。30分近くの時間をハマショー師匠の歌をアレコレ頭の中で熱唱しながら耐えきった。
MRIを受けてからその専門医の診察までは2時間半ほど間があったので朝飯抜きでハングリー状態の私はいそいそと近くの日本橋高島屋に向かう。狙うは特別食堂である。
昭和のデパートにおける聖域みたいな場所が特別食堂である。高島屋の場合、帝国ホテル、鰻の野田岩、和食の大和屋三玄のメニューが頼み放題である。MRI検査を耐えている最中から「鰻重と洋食」というワガママな組み合わせを考えていた。
タルタルソースをべとべと塗りながら食べるエビフライにも惹かれたのだが、帝国ホテル名物のシャリアピンステーキが私を呼んでいたので鰻重の相棒としてそちらを選ぶ。
鰻重はもちろん鰻がたくさん乗っている上等なやつにした。ご飯が見えないほど鰻が敷き詰められていると口だけでなく目も幸せになる。ちなみに空腹バリバリだったのに残念ながら野田岩の鰻重は相変わらず私好みではなかった。
たかだか朝飯を抜いたぐらいでこういうドカ食いをしたくなる自分のシャバダバぶりが残念だが、いざガン患者になってしまったらこんなことは出来なくなりそうだ。これはこれで元気な証である。
「やれるうちにやっておく」。私ぐらいの年齢になるとこういう考え方は大事かもしれない。言い訳みたいな話だが、実際にいつかは爆食など出来なくなるから悩んでいるヒマがあったらせっせと食べるほうが賢明である。
さて、そんなことより「すい臓問題」である。結論から言うと私の抱えるリスクはかなり大きい。そのお医者さんによるとすい臓がんは遺伝的な要素が強いのだとか。私の祖母はすい臓がんで亡くなったからその時点でシード権を手にしちゃったらしい。
おまけに「のう胞」まで出来ているのは間違いなく“予備軍確定”だとか。すい臓の形状からもガンになりやすい傾向があるらしく私はどっからどう見ても立派な“有資格者”なんだそうだ。のう胞が悪性のものだったとしたら放置すると「2~3年後にはこの世からいなくなる」と宣言されてしまった。
「じぇじぇじぇ」というしかなかったわけだが、手をこまねいていても仕方ない。来月に最先端の検査を受けることになった。その名も「超音波内視鏡」である。いわゆる胃カメラの先端に超音波測定器がついていて胃の壁からすい臓の状態を細かくチェックするらしい。
MRIでは3㎝ぐらいにならないとガンは見つからないらしいが、これだとほんのチッポケなやつも発見できるそうだ。いわばガンが芽吹く前の段階で見つけて退治するという流れなんだとか。フムフムって感じだ。
明るく元気なそのお医者さんからは「来月までドキドキしながら待っていてください!」と言われた。言われなくてもドキドキである。まあ、考え込んでも仕方ないから呑気に無事を祈っておこう。
長年にわたって暴飲暴食を続けてきたから仕方ないのかと思ったが、そのお医者さんいわく暴飲暴食は関係なくあくまで遺伝的な要素が大きいとのこと。「今後も好きなものを好きなだけ食べて構わない」とまで言ってもらえた。名医である。
とりあえず来月までちゃんとドキドキしていようと思う。
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