「すあま、何ですかソレ?」「ぎゅうひ?食べ物ですか?」。モノを知らない若者にそんなことを言われると日本文化の危機を感じる。
先日、わがオヤジバンドのライブで演奏した「なごり雪」ですら初めて聴いたという若者がいたから、いまや世代間断絶は想像を絶するレベルになっているようだ。
すあま、ぎゅうひ。この言葉を聞いただけで私は笑顔になる。あの食感、ビミョーな味わい、あれこそがメイドインジャパンの魂じゃないかと思える。
貰い物でわりとよく古典的和菓子の「鮎」をもらう。最中みたいなパリっとした食感の和菓子をもらうより嬉しい。でも私は外側は殆ど食べずに中身のアノぎゅうひだけをむさぼる。
ムチムチ、ムニュムニュ、プリンやババロアでは絶対に敵わないニッポンのムチムチでありムニュムニュである。すあま、ぎゅうひ、加えて言うなら「白玉」「ういろう」「羽二重餅」あたりも同類である。
一連のムニュムニュが好きになったのはいつ頃だろう。物心ついた時には愛していた。小学生の頃、白玉をウチで作ってもらった際に私も参加してデカいのを作ったことを覚えている。美味しい白玉が大好きだったからデカければデカいほど幸せだろうと考えたわけだ。
で、作ってみたらちっともウマくない。デカくて嬉しいのは握り飯ぐらいだという真理を学んだ。白玉は小ぶりで物足りないぐらいだからこそ愛しいわけだ。
その後、マセガキになっていくに連れ女性との交流も増えると必然的にムニュムニュな感触に溺れ始めた。と同時にいろいろな妄想に繋がる?すあまや白玉、ういろう的な感触の食べ物が一層好きになっていった。バカですいません。
「すあま」にも思い出がある。高校時代、学校から駅へ向かう帰り道に小さな和菓子屋があって、そこで「すあま」を一つだけ買って歩きながら食べた。確か一つ50円だったはずだ。
本当は大福などのガッツリ系を買いたかったのだが、その後に寄り道する喫茶店でのお茶代やタバコ代を考えると財布にゆとりが無かった。仕方なく一番安いすあまにした。
味は妙に薄い。パンチに欠ける。でも毎日のように食べていたらいつの間にかハマった。あの素っ気なさ、あのどうでもいい感じ、まったく自己主張しない淡~い味わいが妙に好きになった。
すあまは関西の人はその存在を知らないらしい。そんなところも可愛いじゃないか!食べ物全般なんでもかんでも西からの攻勢にさらされて関東風が萎縮する中、西の陣営に知られてもいない存在は貴重だ。
すあまが全国的に無名なのは名古屋あたりを本拠にする「ういろう」がブイブイ言わせているせいだろう。すあまとういろうの違いはよく分からない。もっと言えば、ぎゅうひ、白玉との違いだって分からない。
とにかく淡い味でむっちりムニムニで赤ちゃんの頬っぺたを食べているような感じの一群なら私はどれだって好きだ。製法は知らなくても困らない。
ネットで探してみたら、これらムニムニ軍団の違いを教えてくれるページはいくつも見つかった。https://chigai.site/21192/ 要はいろいろ蒸したり揉んだり頑張るみたいだ。
ぎゅうひの思い出といえば死んだ祖母とあんみつに入ったぎゅうひを奪い合ったことだ。あんみつは美味しいのだが、豆は好きではない私はアンコとかんてんと黒蜜の味を楽しむ。
そんなあんみつには紅一点というか、薄いピンクか薄いグリーンのぎゅうひが2つほどトッピングされている。あれが妙にウマい。ある日、祖母のあんみつからぎゅうひを一つ奪って食べたら祖母に激しく怒られた
何でもかんでも許してくれる優しい祖母でもぎゅうひを奪われるのは耐え難かったらしい。一気にぎゅうひが貴重なモノに思えるきっかけになった。
ういろうも我が家には常備してある。すあまよりも街なかで発見しやすい。近所にあるコンビニ・デイリーヤマザキにはういろうが常備してあるから通りすがりに買っておく。
ムッチリムニムニ系の癒やしの和菓子の中で別格なのが羽二重餅だろう。こちらは餅を名乗っているだけに今まで書いてきたモノ達とは一線を画す存在だ。
絹でできた羽二重のように軽く柔らかな点が名前の由来らしい。これぞムニュムニュの最高峰と言いたくなる天国みたいな感触である。天国には行ったことがないがきっとそうだ。
確か福井が名産地だ。ういろうは愛知や小田原、すあまは関東だから日本全国でムニムニ選手権が行われているようなものだ。
私のお気に入りは名古屋の老舗和菓子屋さん「遠州屋」の羽二重餅だ。職場の近くにある明治屋の本店にあるのを買うようになってすっかりファンになった。
黒豆入りの羽二重餅のフワフワムニムニの食感と程よい甘みとたまに存在感を感じさせる黒豆のバランスが絶妙で、一口食べれば「何じゃこれ!!」と誰もが言うレベルの美味しさだ。
今ではweb会員登録もしてあるので、明治屋においてある商品以外も取り寄せ可能だ。新たなフワムニ系が届くの今か今かと待っている日々である。
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