銀座8丁目といえば激戦区という言葉がつきまとうエリアだ。BAR激戦区、クラブ激戦区、そしてなんといっても寿司激戦区として有名だ。
キョロキョロ見渡すと寿司屋だらけ。高松市内のうどん屋より密集している。池袋の風俗店よりも密集している。大久保界隈の焼肉屋ぐらいの密集度かもしれない。
それぞれの寿司屋がこの界隈に店を構える独特の矜持を醸し出しているようで、なんとも興味深い。いろいろな店を覗き歩きたいが、やはり一見の店は何かと居心地が良くない。
つい何度か訪ねた店に足を向ける。カウンターで職人さんとマンツーマンで対峙する世界だけに、少しでも店の空気が分かっている方が快適だし、結果的に正解なんだと思う。
インターネットの世界では、食べ歩いた店の印象をアレコレ書き連ねている人が多い(私もだ・・・)。でも、ほんの一度、ランチをサクっと食べた印象だけで、お店のすべてを判断するような書き込みが多くて興ざめだ。
ラーメン屋の寸評じゃああるまいし、まっとうなお鮨屋さんをそうしたノリで評価するのは間抜けだろう。
どんな店だって客との相性はある。その相性だって一度行っただけでは判断できない。私も随分いろんな店に行ったが、他人の評価は私の評価ではない。味は抜群でも再訪する気にならない店は無数にあった。
さて前振りが長くなった。銀座の「鮨・池澤」。昨年、7丁目から激戦区・8丁目に移転した気持ちの良いお鮨屋さんだ。
3年ぐらい前だったか、雑居ビル地下にこじんまりと佇む風情に誘われて飛び込みで覗いてみた。お鮨屋さんには一人で行くのが好きな私にとって、小ささは居心地の良さであり、たまに訪ねるようになった。
移転後、ぐんと綺麗になったせいか、飛び込みでは入れないこともあるが、席に空きがあれば、気持ちのいい時間が過ごせる。素直に旨いものがキッチリ揃ってるし、お酒も結構な品揃え。
何より、押しつけがましいところがない。客に気持ち良く飲み食いさせようという気配りが有り難い。どっちが客だか分からないような勘違いオヤジの店に見習って欲しい姿勢だと思う。こういう空気感は私にとって店の評価を大きく左右する。
「池澤」に行くと居心地の良さに甘えて、いつも酔っぱらってしまい(どこの店でも酔っているが)、食べたものを忘れてしまう。サービスしがいのない客だと思う。
この日、いくつかの旨い刺身、握りの他に、珍味好きの私は、ウニの海水漬け、アンキモ、明太子の干物を食べた。今年はこの時期に旨いアンキモに当たることが多く、「池澤」のアンキモもいい感じにコッテリしていて酒が進んだ。
明太子の干物は初体験の珍味。一見、鮭トバのようで味わいはどことなくカラスミにも似ている。正体を教えてもらうまで明太子だと分からなかった。この手の知らないものに遭遇するからお鮨屋さんのカウンターは楽しい。楽しいせいで私の尿酸値は上がり続ける。
この日呑んだ焼酎もインパクトがあった。白とか黒とかで有名な焼酎「佐藤」の変わり種で、ラベルの色から名付けるのなら「佐藤の茶」。ドリフのような名前だ。
芋焼酎ではなく麦焼酎なのだが、香りと味が普通の麦焼酎より非常に強く、お鮨屋さんの料理には、むしろ芋よりも合っている気がした。
快適で美味しい店なので、もっと真面目に訪れようといつも思うのだが、気がつくと数ヶ月もご無沙汰してしまう。私が大好きなこの店独自のカラスミも今年は一度しか食べなかった。
近いうちにまたいかねば。赤酢を使ったほんのり色づいた旨いシャリももっとガツガツ食べたい。
2008年7月10日木曜日
銀座 池澤
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